ERP for compliance

TRE had a joint seminar in Shanghai

ERP for compliance

連携と照合で不正を阻め ITによる不正対策セミナー

ITシステムの導入による不正対策一と聞くと、セキュリティを張り巡らせた大掛かりな仕 掛けをイメージするかもしれないが、実際には業務のIT化によってデータが可視化・共有化さ れるだけでも大きな抑止力となる。大事なことは、最初の一歩を踏み出すことだ。この“基本” に焦点を絞ったセミナーが9月、上海市内のホテルで開催され、日系企業経営者やマネジメン ト層など約25人が参加した。

  中国における不正の多くは、横領 や横流し、キックバックなどによる、 収益・資産の漏出だ。かつては“郷 に入っては郷に従え”との考え方か ら、日系企業でも黙認するケースが 少なくなかったが、日本本社からの コンプライアンス要求の強まりに加 え、“正直者が馬鹿を見る”社内風 土に幻滅した優秀な現地従業員の 離職などの各種経営ダメージが認知 されるにつれ、対策ニーズが高まってきた。

  セミナー「中国現地法人の不正事例とその対策実務~ITシステム導 入による防止方法の事例~」は、こ うした時代背景を受けて、内部統 制の構築支援などを手掛けるレイズ ビジネス コンサルティング(上海)が、 ERPの開発および導入・運用支援 を手掛けるタイムライズエンジニアリ ング(TRE)の協力を得て開催した。

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不正の“機会”をつぶす

  豊富な内部不正対策の経験を持 つレイズの加納尚総経理によると、 中国子会社における不正は一般的 に、“動機”、“機会”、“正当化” がトライアングルのように結びつい て発生する。加納氏は、「このうち、 企業努力でなくせるのは不正の“機 会”だけ。また、不正を発見しても 「証拠まで入手することは困難な場合 が多く、抑止体制の構築と運用こ そが重要」と強調する。 では、なぜ不正防止にITが役 立つのか。加納氏によると、不正を 防止する手法はの日常的モニタリング(部下が作成した資料を上司が チェックすること)2独立的モニタリ ング(内部監査部など独立部門が定 期的にチェックすること)3部門間 ローテーションの3つが代表的。 このうち3は中国の労働慣行に合 わないため実現は難しい。半面、見落とされがちなのが1だ。仕入先か らの水増し請求、意図的な仕入れ 先への過大支払い、仕入れ先から のキックバック、値引き販売を利用 「したキックバック、架空売り上げに よるインセンティブの詐取などなど、 不正行為の多くは金銭の授受に対 するチェックの不備と、それが従業員に見透かされたことで起きている。

  ITシステムは、データの可視化 と共有化、情報へのアクセス権、業務の申請・確認の手順化などがお こなわれるので、運用を徹底するこ とで前述の1が実行される。さらに、 システム上の記録によって、業務が 正当におこなわれているか否かを事 後的に検証できる。「導入コストは、 目安として30万~100万元。一方、 不正による損害には、水増し請求に対する過大支払いのような実例で も数百万元級が珍しくない」(加納 氏)という。

  ただし導入効果を高めるには注意 事項がある。「システム会社の多く はITシステムの機能をPRしがちだ が、実際には人間による運用との積 算で、初めて十分な効果が生まれ る(機能×運用=効果)」と加納氏は 念を押す。今回のセミナー講師は、 その観点から選定された。

導入・運用サポートこそ肝要

  今回のセミナーにあたり、数多 くのIT企業のプレゼンを聞いたが、 運用サポートの徹底という点で際 立っていた」と加納氏が信頼を寄せ るのが TREだ。

  香港地区で1989年に設立、 2018年9月現在日本人8人を含む 40人の従業員がいる。広州に支社 を持つほか、上海ではパートナー企 業の協力を得て事業展開している。 自社開発のERP“STEP Pro”や、 テーラーメイド・システム、ハードウェ アやネットワークの販売・保守など を手掛けており、香港地区や華南 地域を中心に東南アジア諸国にも 業務展開している。運用サポートを 重視しており、運用保守対応中の 顧客数は約220社、うち10年以上の長期クライアントは110社にのぼ る。「ERPの駆け込み寺」(上野隆 董事長)が目指す姿だ。

  「不正防止のための機能は大抵の ITシステムが備えているが、導入段 階での業務への当てはめ作業が肝 要」と上野氏は強調する。強制的に 業務をシステムに合わせる ERPも あるが、同社は業務フロー、インプッ ト/アウトプットなどのGAP分析(各 社のビジネス・プロセスやニーズと、 パッケージソフトの機能との間の相 違点の抽出)を1カ月半ほどかけて 実施、各社に適したシステムを作り 込む。相違点を埋めることが不正の 機会をつぶす業務改革ともなる。 運用サポートはベンダーにより各社各様だが、同社はス ムーズな運用に移行で きるよう、操作教育も 現場でクライアントのパ ソコンで実データを使っ て実施する。ERPをイ ンストールしたら即導入 完了とするベンダーもあ るが、同社は旧システムと平行稼働させデータの整合性を確認してから運用を開始する。稼働後の保守も “運用保守”まで含んでおり、GAP 分析資料と導入後のシステム環境 履歴をクライアント自身のITスタッ フのように都度保持することで、き め細かい対応も図る。一方でローカ ルベンダー並みの価格帯も追求し、 最低5ユーザーからと、中小零細需 要にも応えている。 「数多くの企業に長年の導入支援 「と運用保守を手掛けてきた経験をも とに上野氏は、「年月をかけた永続 的なシステム改善こそが目指すべき 方向性。ERPのデータを連携・照 合させることにより不正の抑止は可 能だが、より高度な不正対策を実 現するためのシステムの構築と運用 には、ITベンダーばかりでなくレイ ズのような会計コンサルティング会 社とも相談するのが効果的」と語る。

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